腹黒弁天町と人生

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舞台「腹黒弁天町」を観ました。

本来の初日が中止になってたまたま持っていたチケットが初日になった12日、自分が相当くらった自覚があるのでさすがにまとめねばならぬと思いキーボードを叩いています。

 

stage.parco.jp

明治時代後期、ある田舎町に東京から若い教師の財前(福田)と山岡(辰巳)が赴任してくるところから物語は始まる。弁天町に向かう列車の中でふたりは芸者の小雪と出会い、また俗世にまみれた(?)弁天町の人々と出会い「清濁併せ呑む」ことの重要性を説かれたりする中で自分たちは迎合せず生きる!と誓うものの……という感じの話です。

 

 

※ここからゴリゴリにネタバレなので未観劇の方はご注意!!

あと半分くらい自分語りなので舞台の情報を得たい方には向いてないよ!

 

 

生きてるとたまに「そんなふうに生きられたらいいな〜」って私が空想するような人生をそのまま生きているような人に出会うことがある。多分私はそういう人への憧れがかなり強いタイプで、とても好ましく思いつつ、羨ましい妬ましいと思う気持ちと、私にはできないという気持ちの間で暴れだしそうになるのだが、この話の中では財前がまさにその「そんな風に生きられたらいいな〜」の人物にあたる。

自担にその感じの役やられて狂わないオタクおる?私は盛大に狂った。おまけに私何を隠そう自担に憧れる自担になりたいタイプのオタクである。完全に狂った。

 

実は芸者狂いでそのために生活をめちゃくちゃにしたことがあったために、物語の序盤では芸者にもまるでなびかずただただ志高くそのために生きてます!みたいな感じだった財前。他の教師たちにも迎合せず己を貫き、いろいろあって弁天町で出会った芸者・小雪に惚れて駆け落ち、最終的に心中してしまう。

対照的に山岡は序盤でこそ財前と意気投合し己の思うように生きるぞ!と息巻いていたものの、財前が他の男と揉めて行方不明になった後急に周囲に同調し、そつなく暮らし始める。

セリフの言い回しは忘れてしまったけど、そこで山岡が「財前の意識の高さ自分には重荷だったと気付いた」というようなことを独白する。多分山岡は財前のことを本当に好きだったと思うし、一緒に過ごした時間も楽しかったのだと思う。それでも、どんなに財前を好ましく思っていて自分もそうありたいと思っても、重荷だったのだ。

財前が消えた後の山岡の暮らしは安定したものであったと思う。

 

財前が再び目の前に現れた時、もう進む道を違えてしまった2人は喧嘩になってもおかしくないし、実際そういうことになる話もよくある気がする。でも財前は山岡を責めないし山岡も財前を笑わない。2人が酒を酌み交わすこのシーンは本当に優しい。財前が山岡を弱者と責めても、山岡がいい加減現実を見ろと財前を諭しても多分私は自分と照らし合わせて客席で呻くことになる。

改行まで私の話になるので読み飛ばしてもらいたいのだけど、大学を出て、多分フリーランスになる道も個人事務所みたいな感じで働くことも全然できるデザイン職であえて一企業のインハウスを選択している。就活のタイミングでも、その後仕事が苦しい時でもフリーになる選択肢はあまり私の中にはなくて、ここで働くことが自分に合ってると思っているからそうしている。でも全然違うジャンルにぽーんと転職していった人、憧れの会社に入った人、仕事は仕事でこなしつつ自分の作品制作もコンスタントに続けている人、興味が湧いた他の分野を学び直している人、子育てをしている人など周囲には本当に色んな道を歩いている人がいて、自分はそのいずれにもなれず、多分ただ定年まで同じことをするのだろうなとつまらなく思うこともある。

この舞台の2人は最後までお互いを否定しなかった。私はどちらかと言えば山岡のような人生を送っているけど、山岡が山岡自身を否定しなかったことにもすごく救われた。

どちらが良い悪い、勝った負けたではないんだよな、これ。

 

「あいつはもう一人の俺なんです。だから遠くへ逃げてほしい」と財前に自分が選ばなかった人生の夢を見る山岡の気持ちは痛いほどわかり、同時になんて勝手なことを言うんだと憤りもしている。ここ数年快進撃を続けるふぉ〜ゆ〜を追うことで夢を実現していく心地を勝手に味わっている自分のことも考えてしまう。

感化されやすい人間なので、どんな道を選ぶにせよ妥協したり消去法で仕方なく、とならないように主体性を持って自分の人生を生きようと思うのだった。

 

 

このお話に関して言えば、最後にはこのお芝居は山岡の依頼によって彼の人生を題材に作られたものだとわかり、おまけになんかめっちゃ長生きしてめっちゃ成功して金持ちになってるのでジジイやりおったな!!!wwwとなれてめっっっちゃ良いです。

 

晩年心中事件があった屋敷を買い取り、財前と小雪が死んだ奥座敷を眺めて過ごした山岡が、きらめく青春の思い出を大事にするとともに見たか財前!やってやったぜ!の気持ちでいてくれたらいいなあと思う。

 

 

 

休憩込みで3時間くらいある舞台なんですが、まじでぜんぜん飽きなかったしもうみなさん本当に達者で笑えるし最高に楽しかったです!みんな腹黒、腹割いて見せられたら良いよね本当に。信じなければ信じてもらえないんだよ。オタク的には時代背景も衣装や小物やなんやかんやも好きだし、自担が駆け落ち、心中、紙吹雪が散る演出最高すぎてそこだけのためにでも無限に通える!!!!って感じでした。

大阪公演まで何事もなく終えられますように応援しております!